平成24年版厚生労働白書で感ずる事

先日、厚生労働白書が発表されましたが、私なりに今回の白書のポイントを上げるとしたら次の2点です。
1. 高齢者はこの10年で約10歳若返っており、従来の「高齢者」の概念で現在の「高齢者」を考える事は妥当ではない。高齢者の消費支出は年齢と共に減少しているが、この若返りにより消費自体が若返るとすれば2020年には約17兆円の消費の上乗せ拡大につながる。この高齢者の中間層の消費を喚起する方策の創出が今後の重要な課題となる。
2. 現在、医療・介護の従事者は平成23年度で462万人となっているが、平成37年度には704~739万人が必要となると見込まれている。市場規模も同様に約44兆円から約74兆円に拡大すると想定されている。
特に看護職員は141万人から195~205万人と約40%、介護職員は140万人から232~244万人と約70%の大幅な職員増が必要とされている。

この事に付いて感じる点を以下に述べて行きたいと思います。
1. 高齢者の若返りについて
国は成長戦略の一環として、高齢者の若返りを経済成長の要素として捉えているが、私としては別の視点でこの事を捉える必要があると考えます。
以下、私の考え方を述べさせて頂きます。
1) 現在の高齢者区分の見直し
現在の65歳以上を高齢者とする区分は現状にそぐわなくなっており、要介護認定者の比率や、70~75歳の医療費自己負担が「1~3割」と70歳以下の3割負担と比較して優遇されている現状を考えても5歳程度引き上げて、前期高齢者70~79歳、後期高齢者80歳以上と設定する事が妥当だと考えます。
2) 高齢者の労働力としての活用の方策
「少子化」と急速な高齢化による「多死化」により日本の総人口は平成22年の1億2,806万人から平成60年には1億人を割り込み9,913万人と大幅に減少すると想定されております。更に、高齢者人口の比率は平成22年の約23%から平成72年には約40%になると推計されております。この事は日本の労働人口の大幅な減少を意味するものであり、特に製造業が労働力を求めて海外に移転を余儀なくされ、国内産業の空洞化を招きかねないと危惧いたします。従って、現在有効に活用されていない女性と高齢者の活用による労働力の確保は今後喫緊の課題になると考えます。例えば、少子化に対する対応として女性の社会進出を支援する為に、保育事業や家事支援への高齢者の活用や事業への財政支援。短時間労働制度や週2日労働制度等の導入による高齢者が働きやすい環境の創設等、取り入れるべき対策は考えられると思います。
2. 医療・介護市場の拡大について
確かに高齢化の進行に伴い、医療・介護の市場が拡大する事は間違いないと思います。しかしながら、日本の総人口が減少すると共に高齢者の比率が増加する内で、現状でも各高齢者施設が介護スタッフの確保に躍起になっている状況であるのに、どの様に大幅に拡大する必要人員を確保するのか具体的な対策を提起しなければ絵に描いた餅になってしまうと思います。現状の介護スタッフの労働環境は「不定期勤務の身体的に辛い労働時間」、「汚い作業内容」、「安い賃金体系」にあり、この環境を変えない限り近々の内に医療・介護制度の崩壊を招きかねないと危惧しております。
この事を改善する為には
・現在、施設の介護スタッフが多くの時間を取られている清掃・洗濯・居室のリネン等の雑用に介護補助員と言う形で高齢者を活用する事による介護スタッフの負担の軽減を図ると共に、この事を制度化し普遍化する事。
・在宅訪問介護に於ける家事支援においての高齢者の活用。
・介護保険料及び自己負担比率の引き上げによる介護職員の給与改善。
等の施策が必要であると考えます。

いずれにしても、今後の社会を考えた場合、高齢者を従来の「弱者」であり「保護すべき対象」であると言う考え方から、高齢者も社会の資源であると言う考え方に切り替える事が必要であり、その事が「活力ある社会」を作る上で大切な事ではないでしょうか。その為には、当然の事ながら高齢者自身の意識の改革も必要であり、当研究所ではその事についても提言を行っていきたいと考えております。

(参照:平成24年度版厚生労働白書http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/12/