在宅医療を受けている人への医療体制はどうなるのか?

2014年の診療報酬改定により、同一建物(施設を含む)入居者に対する在宅療養支援診療所による訪問診療に関わる在宅時医学総合管理料(診察料とは別に在宅患者の医学管理をする費用)が50,000円/月・人から、同一建物入居者に対し、初回訪問診療を行う対象者が1日2人以上であった場合、12,000円/月・人と約1/4に下げられました。
これは老人ホーム、サービス付高齢者向け住宅、特別養護老人ホーム、賃貸・分譲マンションに居住する通院困難な方に対する訪問診療の報酬を大幅に引下げるもので、厚生労働省が進めたいと考えている戸建住宅居住者に対する訪問診療に対しては従来通り50,000円/月・人と変わりません。

厚生労働省がこの様な大幅な引下げを行った背景は
1・事業者(施設所有者など)が特定の医療事業者(病院または診療所)に専属的に訪問診療をさせていると共に医療事業者から訪問診療費のキックバックを受け取っているケースがある。
2・訪問診療事業者が通院可能な要介護認定者に対しても訪問診療を実施し、在宅時医学総合管理料を受領しているケースがある。
3・施設によっては1日に35人も訪問診療しているケースがある。
等により訪問診療という制度が過剰な医療を引き起こす引き金となって、医療費増大の一因となっている事にあります。

確かに今まで、訪問診療を行ってきた診療所については一部儲けすぎとの批判があったことは事実ですが、一部の医療事業者を除いてほとんどの医療機関は真面目に対応してきております。しかしながら、今回の診療報酬改定により訪問診療事業からの撤退を表明する医療機関が増加している上に、新規契約の中止または廃業を決めている医療機関が10%以上ある状況にあります。

国は介護保険の増大に歯止めをかける為、施設介護から在宅介護へと大きく舵をきり、厚生労働省・国土交通省の共同所管による補助金を付与したサービス付高齢者向け住宅を全国で60万戸建設する計画を立てております。このサービス付高齢者向け住宅の居住者が要介護状況となった時は、訪問介護・訪問診療・訪問看護により安心・安全を確保するものとなっていますが、今回の変更処置はこのサ―ビス付き高齢者住宅居住者への訪問診療体制整備にも不安をもたらすものとなっております。

高齢者が戸建ての自宅で生活していく事は訪問介護・訪問診療・訪問看護を受けたとしても建物構造上の問題や、特に孤独の解消という問題があり難しい状況にあります。地区コミュニティの支援等が充分に受けられればまだしも、その様な支援を受けられる地域はまだ限られています。その為、高齢者住宅だけではなく、駅前のファミリーマンションを購入して移転する高齢者も多く存在し、建物によっては高齢者が半分を占めるマンションも存在しています。今回の改定は、この様なマンション居住者への訪問診療も対象となっており、この事が問題となっている訳です。

しかしながら、一方で医療費の増大は社会問題となっており、この抑制も喫緊の課題となっております。近年、訪問診療を手掛ける医療機関が急速に増大しており、地域医療の充実にとっては良い事であると思っていましたが、単に儲かるからと言う事だけで参入している医療事業者が存在している事も事実です。

今回の改定で、この様な一部の問題のある事業者が淘汰される事になると想定され、その事については一定の成果を上げた事になるとは思いますが、今後国が推進しようとしている「在宅医療」「在宅介護」に対する阻害要因となる事は絶対に避けなければなりません。訪問診療報酬の引き下げを行うのであれば、同時に「地元の掛かりつけ医」体制の整備と「24時間定期巡回訪問看護・介護」体制の早急な整備の促進が必要不可欠であり、その事なしでは悪戯に利用者の不安を煽る事になりかねません。

厚生労働省に対しては、現実問題として「サービス付き高齢者住宅」や「高齢者向け分譲マンション」、「市街地居住型分譲マンション」に居住する高齢者が今後増大するであろう実態を踏まえて、これらの居住者が充分な医療・介護を受ける事の出来るよう、総合的な対応を強く望みたいと思います。
※在宅療養支援診療所とは以下の条件を満たす診療所を言います。
1.在宅医療を担当する常勤医師が3名以上配置
2.24時間連絡可能な保険医又は看護職員を指定
3.24時間往診可能な体制の確保
4.24時間訪問看護の提供が可能
5.保険医療機関との連携により入院が必要な場合の対応が可能
6.在宅看取りの実績                      等

※訪問診療
通院が困難な人(一般的には要介護認定者が対象)に対して月2回以上訪問診療計画
に基づいて訪問して診療を行う。
長期的な診療計画に基づき、予防・健康管理・治療を行う。
個人の支払は(往診料+在宅時医学総合管理料+居宅療養管理指導料)×負担割合