医療・介護総合推進法を考える ~その2:介護

今回は前回の医療に続いて介護の面に於ける主な変更点について述べていきます。
今回の法律による主な変更点は以下の様な内容となっています。

1.特別養護老人ホームの入居基準を要介護認定3以上とし、
更に低所得入居者に対し食費・居住費を補填する「補足給付」の要件に資産状況を追加

特別養護老人ホームの入居者は、現状に於いても要介護認定1,2の人は全体の1割程度にすぎず、現状の追認に近いものとなっています。待機者が52万人と言われていますが、多くは他の施設に入所していて、料金の安い特別養護老人ホームの空室待ちの状況であり、自宅での待機者は約18万人となっています。
更に、待機者数については地域格差が大きく、地方によっては待機者0という地域も存在している状況にあります。
資産状況については現金資産1,000万円以上の人に対する多床室の室料に対する補足給付を廃止するというものです。これは、収入が少なくても、ある程度の資産をお持ちの方については相応の負担を求めるというものです。

2.年収280万円以上の人の介護保険自己負担率を現状の1割から2割に引き上げる。
この年収基準は家族単位ではなく個人単位となっています。従って、夫が年収300万円、妻の年収が70万円の場合、夫が2割負担、妻が1割負担となります。1割の負担増といっても、要介護認定5の方の月額負担増は約3万5千円となり、年収が300万円の方に対しては14%の負担増となるため、相当な負担増となります。

3.要支援認定者を国の介護保険制度から外して市町村事業に移管する。
更に、NPОやボランティアを積極的に活用する。
この事が今回の変更で最も大きな項目であると思っております。この問題を具体的に挙げると以下の様な事です。

  • 第一に、今まで要支援認定者はデイサービスを利用してきましたが、要支援が国の制度から切り離されて市町村管轄になった為に、各市町村の財政事情や方針により対応が変わってしまう事が想定されます。
  • 第二に、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅の運営者は介護事業者がその多数を占めています。これらの事業者は国の介護保険による介護報酬を収益の基本としています。その為、要支援者が国の介護保険制度から切り離されてしまった場合、元々要支援者の入所に対し消極的であった事業者が要支援者の受け入れに更に消極的になるものと想定されます。
  • 第三に、NPОやボランティアによる支援で介護に対する質が担保できるかどうか。更に、NPОやボランティアの確保が容易な地域と難しい地域との格差が発生する事が予想されます。国は要支援認定者の切り捨てでは無いと言っていますが、その様な不安を抱いておられる方が多い事も事実です。



確かに、介護保険制度が開始された平成12年度の介護費用約3.2兆円が、現状約10兆円となっており、更に平成35年度には21兆円になると想定されている状況で、介護保険制度を維持する為にはある程度の負担増は止むを得ない事であると思います。

国は「施設医療から在宅医療へ」「施設介護から在宅介護へ」という方向性を明確に打ち出しております。この方針の大きな目的の1つは「医療費・介護費の削減」にあります。この為、国は中学校校区1か所のショートステイ、デイサービス、居宅介護支援事業所、訪問介護事業所を備えた「小規模多機能施設」を核として、定期巡回随時対応型訪問看護・介護や訪問診療により自宅での継続居住を可能としたいと考えています。

しかしながら、これらの施策については事業的に難しい事もあり、中々整備が進んでいない状況にある為、現実問題として要介護状態になっても自宅で継続居住する事は困難な状況にあります。この様な状況に於いて、今後も医療費、介護費用の削減の為に高齢者医療制度における自己負担率の引き上げ、医療保険料の引き上げ、介護保険料及び自己負担率の引き上げ等の施策が行われる事が容易に推察されます。

従って、高齢者にとって自己防衛の為に成人病や、要介護や認知症にならない為の予防が益々重要になってくると考えます。その為には、生活習慣の改善や適度な運動、コミュニティ活動等による社会的活動への参加等が重要となります。