「平成27年度・高齢社会白書」解説

平成26年度の高齢社会白書の解説は、昨年このニュース解説で取り上げましたが、27年度の高齢社会白書が6月にネット配信で発表されましたので、今年度の白書の内容について昨年度とは異なる視点で私見も交えて取り上げます。

◆社会保障給付費は大幅に増加、特に高齢者関係給付費の増加が問題。
 その原因の1つは高齢者の受療率の高さ

2012年度の社会保障給付費(年金・医療・福祉その他を併せた額)は108兆5600億円と過去最大の水準となり、国民所得に占める割合は1970年度の5.8%から30.9%に上昇しました。社会保障給付費の内、特に高齢者関係給付費(年金保険・高齢者医療・老人福祉サービス・高齢者雇用継続給付費の合算)の増加が著しく、2012年度は74兆1000億と前年より1兆9000億増加し、社会保障給付費全体に占める割合は68.3%に上っており、今後も更に増加すると想定されています。
この高齢者関係給付費の増加の原因の1つは、高齢者の受療率の高さにあります。65歳以上の高齢者の入院・外来の受療率は35歳~64歳の人と比較して約3倍となっています。医療サービスの利用状況についても「ほぼ毎日」から「月に1度」位迄の比率が約62%となっており、諸外国と比較しても高い水準となっています。団塊の世代が全員75歳以上となる2025年に向けて国は様々な高齢者関係給付費の抑制策を講じており、今後自己負担の増加が想定されます。

◆1人暮らし高齢者が大幅に増加、その内4割の人が孤独死を身近に感じている
 子供のいない人では「頼る人がいない人」は女性で2割、男性で3.5割

65歳以上の高齢者の子供との同居率は1980年に約7割であったものが、1990年には5割を割り込み、2012年には約4割と大幅に減少しています。
その結果、1人暮らしの高齢者の増加は男女共に顕著となっており、1980年に男性19万人(高齢者人口に占める割合4.3%)、女性69万人(同11.2%)であったものが2010年には男性139万人(同11.1%)、女性341万人(同20.3%)と大幅な増加となっています。
この事は、日常的な交流に影響を与えており、高齢者の日常的な会話の頻度は「毎日会話している」人が全体では9割を 超えているが1人暮らしの高齢者については「2~3日に1回」以下の人が最も多く、男性で28.8%、女性で22%も占めています。1人暮らしの高齢者の増加は高齢者の不安感にも影響しており、孤独死を「身近なものと感じている」人の割合は高齢者全体では2割以下であったが、1人暮らしの人では4割を超えています。また、病気等の時に看護や世話を頼みたい人は、子供のいる人では男性の41%、女性の58.2%が子供と答えています。
一方、子供のいない人の場合は、女性は「該当者がいない」が21.5%にすぎないが、男性は「該当者がいない」が3
5%と最も多く、次いで「その事で頼りたいとは思わない」が22.6%を占めており、男性独居高齢者が如何に社会的交流が不足しており、孤独であるかが想定されます。

◆要介護になった時の主な介護者は同居者、但し介護者も高齢化している
 一方、虐待を受けている人の8割が女性、7割が要介護認定者、加害者の殆どが実の家族

要介護状況になった時の主な介護者は6割以上が同居者となっています。この同居者の内訳は配偶者が26.2%、子供が21.3%、子供の配偶者が11.2%となっています。子供の配偶者が少ないのは、配偶者自身が実の親の介護に直面している事も原因と考えます。
また、平均寿命が延びた事により、要介護者の高齢化が進み、それに伴って介護者の高齢化も進んでおり、要介護者と同居している主な介護者の年齢は男性で69%、女性で68.5.%が60歳以上となっていて、老々介護の状況が益々深刻化しております。また、要介護4以上となった人の介護に要する時間は50%以上の人が「殆ど終日」と答えており、非常に大きな負担となっております。
この負担も大きな原因になっているのか、高齢者に対する虐待も増加しており、2013年度の高齢者に対する虐待判断事例件数は15,952件に上っています。その内、98.6%が養護者によるもので、虐待を受けている高齢者の8割が女性であり、7割が要介護認定者となっています。
更に、虐待の加害者は「息子」が41%と最も多く、次いで「夫」19%、「娘」16%と実の家族が殆どを占めています。この事は男性が慣れない介護に精神的に追い詰められており、特に息子の場合、仕事と介護に挟まれてより精神的に追い詰められている事が想定されます。

◆平均寿命と平均余命は大幅に延びているが、健康寿命との差が問題である

平均寿命(その年に生まれた子供の平均余命)は2013年現在、男性80.2歳、女性86.6歳となっています。
65歳時の平均余命(その年齢の人が平均後何年生きるか)は2013年には男性19.1年(84.1歳)、女性24.0年(89歳)となっていますが、2060年には男性22.3年(87.3歳)、女性27.7年(92.7歳)まで延びると想定されています。
一方、2013年時点の健康寿命(何の支障も無く生活が送れる期間)は男性で71.2歳、女性で74.2歳となっており、平均余命との差が男性で12.9年、女性で14.8年となり、平均的にはこの期間、何らかの障害を抱えて生きていく事となります。
厚生労働省も、この健康寿命を延ばす事に着目し、平成26年度版厚生労働白書の中で、「健康長寿社会の実現に向けてー健康・予防元年―」と名付け、健康寿命を延ばす為の様々な施策を打ち出しています。
いずれにしても、今後益々高齢化が進んでいく中で、如何に健康寿命を延ばして行くかが高齢者自身にとっても、社会全体にとっても最も重要な課題である事は明白です。

◆高齢者は経済的には自立している

要介護状況になった時の費用の負担に付いては「特に用意しなくても年金等の収入で賄える」が42.3%、「その場合に必要な貯蓄は有る」20.3%、「子供からの援助を受ける」7.7%、「資産の売却で賄う」7.4%と全体の87.6%の人が「何とかなる」と考えており、経済的な不安についてはあまりなく、自立している事がわかります。

◆就業高齢者は今後も増加する
現在、65歳~69歳の高齢者の内、男性の49%、女性の29%が就業しています。
2014年度の日本の総労働人口は6,580万人であったが、その内65歳以上の人が696万人(総労働人口の10.6%)に上っており、1980年の4.9%から大きく増加した。
日本の総人口が減少に向かっており、それに伴い総労働人口も減少して行く中で、高齢者の就業人口の拡大は今後の社会の大きな課題であります。

◆9割の人が単なる延命治療を望んでいない
2012年の調査によると「延命のみを目的とした医療は行わず自然に任せて欲しい」人が91.9%となっており、2002年の調査に比較して10年間で10%増加しております。
この事は延命治療に対する認識が向上したといえますが、単なる延命治療を拒否する為には「家族との意思疎通を含め、どの様な準備が必要」かに付いての認識が向上しているとは考えられません。
この事で家族を含め話し合いをした人は少ないというデータもあり、もっと家族も含め積極的な議論が必要であると考えます。

◆まとめ
今後の課題として、以下の様なものが挙げられます。
今後、医療・介護については費用の抑制や自己負担の増加が充分に予想される中で、軽い運動や会話等の交流を通じて認知症や要介護の予防を行いつつ、益々長くなって行く余生を「生き生きと健康に過ごす」と共に、孤独感の解消や、相談できる人をどう確保していけるが最も大切な事だと思います。
子供たちは子供たちの生活があり、全面的に頼る事が難しい現実の中で、地域の交流や助け合いの場を今から努力して作るのか、それともその様な生活が出来る住まいを探すのか、今から真剣に考えざるを得ない状況にある事を意識しなければならないと思います。