介護離職と介護施設の不足論議を考える

最近、国を含めて介護離職の問題が大きく取り上げられており、同時に介護施設の不足の話題となっていますが、果たして本当に大きな問題なのであろうか。
同時に、介護施設は本当に不足しているのだろうか、検証してみました。

<要介護者の現状と、介護施設の現状分析>
 ・要介護認定者数     5,154,900人(要支援1,2含む)
 ・要介護1以上認定者   4,008,400人
      注)現実には、施設は要介護1以上しか受け入れない
 ・要介護3以上認定者   2,153,691人
 ・特別養護老人ホーム待機者 523,000人

 注)但し、要介護3以上で自宅での待機者は 153,000人

 ・介護施設毎の収容可能人数
   特別養護老人ホーム    538,900人
   有料老人ホーム      387,666人
   認知症グループホーム   184,500人
   サービス付き高齢者住宅  158,579人(国は60万人を目標)
   老健施設         352,300人
   介護療養病床        66,100人
    総計         1,688,045人
(要介護1以上認定者の42%3以上認定者の78%)

注)その他軽費老人ホーム、養護老人ホーム併せて156,587人の
  収容があるが、この2件は生活困窮者で且つ健常者対象であるため除外する。

上記の内容で解る様に、現状でも介護関連施設は要介護1以上認定者の4割以上、全面的に介護が必要で自宅での介護には困難が伴う3以上の認定者に対しては8割近い人が入居出来る状況にあります。更に、有料老人ホームにしてもサービス付き高齢者住宅にしても、おおむね15万円/月・人の費用を必要とする為、これらの施設が大量供給されたとしても、それに対応する需要が発生するとは考えにくい状況です。現実に、これらの施設が満室で入居出来ないという状況にはありません。

現在、低所得者が入居可能な施設は特別養護老人ホームしか無いのが現状であり、従って、特別養護老人ホームの増設が国の課題となっているわけです。(但し、生活保護受給者についてはサービス付き高齢者住宅事業者の一部が受け入れています。)国は特別養護老人ホームの供給を促す為に、建設費の補助金が不要で且つ、事業者の資金負担が少ない借家方式での運営を認める方向で動いておりますが、そこまで開設基準を緩めるのであれば、一部民間の事業参入を認めるべきであるし、その方が供給促進に繋がると考えます。
いずれにしても、介護関連施設の不足論議は低所得者に対する対応の問題であり、介護関連施設全体に対する問題とは異なるものだという認識が必要です。

◆上記の内容を踏まえて介護離職の問題を考える
親の介護の為に子供が現在の仕事を辞めて、介護に専念したり、時間の自由になるアルバイトに勤務変更する人が年間10万人もおり、国もこの事を問題視し、介護離職ゼロを目指す為の方策を大々的に打ち出そうとしております。しかしながら、本当に国の施策として打ち出すような問題であり、親の介護の為に子供が離職までしなければならない問題なのでしょうか。
私は、この事に違和感を抱かざるを得ません。

要支援や要介護であっても介護度が低い場合であれば、子供が勤務している昼間の間は訪問介護やデイサービスやショートステイを上手に組み合わせる事で自宅での介護は可能であると思います。また、介護保険による訪問介護だけでは不十分と考えるのであれば、介護保険の自己負担より安い料金で介護保険適用外サービスを提供してくれる民間事業者もあります。更に、介護・医療費の高額負担限度額の制度もあり、両方の金額が一般的には67万円を超えた場合には差額が支給されます。

これらの制度を組み合わせる事により、昼間は医療・介護のサービスを利用し夜間は自分が対応する事で離職せずに自宅での介護は可能だと考えます。仮に、介護度が高くて常時介護が必要な状況であれば有料老人ホームの入居を検討すれば良いし、自分で少しでも直接介護したいのであれば毎日施設を訪問して出来る範囲で介護すれば良いのではないだろうか。
実際に毎日施設を訪問し、食事の介護をしている家族も居られます。入居出来る施設が全く無いという事は考えられません。親の収入が少なくて入居に伴う費用が不足するのであれば、勤務を継続しながら不足分を補助すれば良いのではないでしょうか。

要介護状態になった場合の平均生存年数は5年と言われています。介護する人には親が亡くなった後も長い年月が待っています。その事を考えれば、親の介護の為に離職までする事が正しい選択であるとは思えませんし、親の望む事でしょうか。

それでも介護離職を選択する理由は、「1.介護に関する知識の不足」「2.地域包括センターや行政等の相談窓口が充分に周知、認識されていない。」等によるものではないかと考えます。
身の回りに的確に相談できる人が居れば避けられるケースが多いのではないでしょうか。何れにしても、個人の選択の問題であり、国の施策として打ち出す様な問題では無いと感じております。