平成29年度高齢社会白書を読んで

平成29年6月に29年度の高齢社会白書が公表されました。27年度、28年度の解説とは異なる視点で個人としての感想も交えて解説して行きます。

●高齢者世帯が急速に増加、一方親族同居の場合でも介護の問題がある
我が国の全世帯数は平成27年現在、5036万1千世帯、その内65歳以上の高齢者のいる世帯は2372万4千世帯となり、全世帯の47.1%を占めています。
この「高齢者の居る世帯」の内、「高齢者単独世帯」「高齢夫婦のみの世帯」を合わせた高齢者世帯は1371万2千世帯で全世帯の27.2%にも達しており、前年より約50万世帯増加しています。また、 要介護者から見た施設介護も含めた介護者の内訳を見ると、同居親族が約60%を占めており、介護の大きな部分を同居親族が担っている事が分かります。
その介護を担う人の約7割が女性であり、男女共に60歳以上の人が約7割に上っています。従来,わが国に於いては家族が介護を担うのが当然の事でありましたが、高齢者世帯の急速な増加が老々介護の問題が浮き彫りになってきた要因であるとおもいます。それらの問題を介護保険制度が発足した訳ですが、問題はこの介護の負担を軽減する為の在宅に対応する為の24時間常時対応型訪問介護、訪問看護、ショートステイ、デイサービス等を備えた地域密着型小規模多機能施設の整備が進んでいない現状と支援窓口の広報不足にあると考えます。

●高齢者は一般的に経済的にも体力的にも恵まれているが、子や孫の生活困窮が新たな不安材料になっている

現在の暮らし向きに「心配ない」と考えている高齢者は平均64.6%に上り、この数値は年齢が上がると共に上昇し、80歳以上では71.5%となっています。持ち家率、平均年収についても60~69歳では持ち家率91.6%、年収573万円、70歳以上では持ち家率93%、平均年収449万円となっています。更に、60歳以上の人の貯蓄は平均2396万円、中間値でも1592万円となっています。貯蓄の目的を見ると、「万一の時の備えの為」が47.5%と最も多く、「子供や家族に残す為」が2.6%に過ぎず、「貯蓄は自分たちの生活の為」という意識に変わって来ている事が伺われます。
一方、体力的にも向上しており、平成27年度の75歳~79歳の体力は男女共に、10年前の平成17年度の70~74歳の体力と同様であり、この10年間で5歳若返っています。この様に、現在の高齢者は一般的に経済的にも体力的にも恵まれた状況にあるといえます。
しかしながら、一方で新たな問題が発生しています。現在、60歳以上で18歳以上の子や孫がいる人は全体の83.4%となるが、その内子や孫の生活費を賄っている人は、「生活費の一部を負担している」人を含めて20.8%に上り、特に60歳~64歳の男性に於いてはこの比率が34.6%にもなっており、「生活の殆どを賄っている」人も9%にも上っている状況にあります。
しかも、その子や孫の80%が仕事をしているにもかかわらず、親や祖父母に経済的に依存しており、子や孫の経済的依存が高齢者の生活にも影響を及ぼし始めている事が想定されます。

●要介護認定者は増加しているが、施設はこれ以上の大幅な増加が必要なのか
要支援者が国の介護保険制度から外れ市町村管轄になった事もあり、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅の運営事業者が実態として要介護1以上の要介護認定者しか受け入れない現状を鑑みると、要介護と施設の関係は要介護1以上の人を対象に考えざるをえない為、この項ではこの視点で述べて行きたいと思います。
65歳以上の高齢者の要介護認定者は国の介護保険制度から除外された要支援認定者を除いた要介護認定1以上の人が平成26年度で424万1千人となり、前年度より約14万人増えています。
一方で、特別養護老人ホーム、老人保健施設、グループホーム、介護療養型医療施設、有料老人ホーム、サービス付き高齢者住宅等の施設の収容人数は有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅が大幅に増加している事もあり、185万7千人と要介護1以上の認定者の43.8%にも上っております。
一般的な民間事業者が運営する有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅の月額費用が15万円/月・人も掛かる事を考えると、この様な民間施設の需要が今後大幅に増加するとは考え難いと思います。
これからも増設が必要なのは増え続けている認知症患者患者に対応する「グループホーム」や低所得者にも対応する「特別養護老人ホーム」であると考えます。更に、自宅で生活をせざるを得ない要支援認定者に付いてどう対応して行くかが今後の大きな課題であると考えます。

●介護職員不足が拡大、介護の問題は職員確保の問題でもある
介護保険制度がスタートした平成12年度と比較して、介護に従事する職員は約3.3倍の183.1万人となっています。しかしながら介護職員の慢性的不足は解消されておらず、有効求人倍率は全産業平均の2.2倍の3.02倍となっています。現実に、職員が確保出来ない為に施設の一部が運営出来ない様な事態も発生しています。