令和元年「高齢社会白書」解説

6月18日、令和元年度の「高齢社会白書」が発表されました。主なポイントについて解説します。

1.高齢者の労働状況について
平成30年の総労働人口は6,830万人。そのうち、65歳以上の労働人口は875万人で、総労働人口の約13%となっています。この割合は、平成23年の約9%から上昇しつづけている一方、失業率も平成22年と比較して約半分の2.6%となりました。ちなみに、15歳以上の全年齢失業率は2.4%なので、「働きたくても仕事がない」人の割合は、高齢者になってもあまり変わらない状況になっていることが分かります。
また、875万人のうち、70歳以上の労働人口が425万人と半数近くになっており、高齢者の労働人口の増加は、定年の延長が要因というよりも、高齢者が労働力として重要な役割を果たすようになってきているのではないかと考えられます。

2.高齢者の所得および金融資産の保有状況
高齢者の平均年間所得は319万円ですが、分布を見ると、300万円以下が全体の約6割、300~550万円が約3割、550万円以上が約1割となっており、収入格差が存在しています。
年代別の金融資産の保有状況は、2004年時点で59歳以下が約48%、60歳以上が約52%を保有していましたが、2014年時点では、59歳以下が約35%、60歳以上が約65%となっています。直近のデータは白書にはありませんが、全金融資産に占める60歳以上の保有率が増加していく傾向は、現在も継続しているものと考えられます。人口構成の割合の変化を勘案したとしても、若年層の金融資産が減少傾向にあるものと推定されます。

3.孤立死について
60歳以上の高齢者で、孤立死を身近な問題として「とても感じる」「まあ感じる」と回答したのは、全体で34%となっていますが、一人暮らし世帯では51%と半数を超えており、前年の45%と比較して、約6%も増加しました。
現実に、東京都監察医務院のデータによると、東京23区内に於ける65歳以上の高齢者の自宅での孤立死数は、平成29年で3,333人に上りました。また、住宅火災での65歳以上の死者数は平成29年に646人となり、住宅火災による全死者数の約73%を高齢者が占めています。
高齢者の独居世帯が増加している中で、孤立死をより身近に感じる方が、かなり増えてきている様子がうかがえます。

4.高齢者の虐待と近所づきあい
高齢者虐待に関する相談・通報件数は、「施設従事者によるもの」が平成29年で1,898件と前年より約10%増加、「近親者によるもの」が30,040件と前年より約8%増加しました。なお、実際に虐待と判断された件数は、「施設従事者によるもの」が510件、「近親者によるもの」が17,078件となっています。
虐待を受けている高齢者のうち、女性が約76%と多く、虐待を受けている高齢者の約67%が要介護認定者となっています。
虐待の加害者は「息子」が40%、「夫」が21%、「娘」が17%となっており、自宅介護の難しさを表しています。
一方、高齢者の近所付き合いに関しては、「親しく付き合っている」「挨拶以外にも付き合いがある」と回答した割合は、男性の単身者が34%、夫婦の世帯で55%、女性の単身者で63%、夫婦の世帯が68%となっており、男性の単身者の近所付き合いの低さが際立って低くなりました。男性高齢者をいかに社会へ参加させていくかが、依然として重要なテーマとなっています。