「今後の認知症施策の方向性」について

厚生労働省から認知症患者の自宅でのケアを目指す為の「今後の認知症施策の方向性」についての発表がされました

6月18日に発表されたこの施策の目標は「認知症になっても本人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域の良い環境で暮らし続けることのできる社会」の実現としていますが、つまり認知症の方を施設や病院ではなく自宅でケアしていく事を目指して、その為の方策を打ち出したものです。

現在、認知症の患者は約200万人といわれておりますが、今後急速に増加すると想定されており、2030年には350万人を超えるとみられております。

現状、特別養護老人ホームやグループホーム、介護付有料老人ホーム、精神科病院等で対応されている認知症患者を在宅でケアする事を目的として、その為の種々な施策を打ち出したものであり、要介護認定者の施設から在宅介護へと言う方向性に沿った施策であるといえます。

詳細については下記の図(厚生労働省発表)を参照頂きたいと思いますが、ポイントを整理しますと以下のようになります。

1)認知症の早期発見及び早期対応の方策

認知症は早期に対応すれば改善の可能性が高いとされており、早期発見、早期対応が重要であり、その為「かかりつけ医」の認知症対応力を向上し、早い段階で専門医療機関への受診勧奨を通して早期診断に寄与すると共に、看護職員・作業療法士等の専門家からなる「認知症初期集中支援チーム」を地域包括支援センター等に配置し、自立生活のサポートを行う。

2)早期診断を担当する「身近型認知症疾患医療センター」の整備

現在の医学では必ずしも認知症の病型診断が可能なわけでは無い為、現在171ヶ所ある「認知症疾患医療センター」に加え、的確な診断やかかりつけ医、地域包括支援センター等との連携・支援を担う「身近型認知症疾患医療センター」を全国300ヶ所、高齢者6万人に1ヶ所程度整備

3)関係者を集めた「地域ケア会議」で総合的なケアプランの検討

認知症の人の適切なケアプラン作成のため、ケアマネージャーが作成したケアプランを基に、医療・介護従事者、行政、家族等の支援に携わる人が一堂に会する「地域ケア会議」において検討、検証を行う体制を整備する。

4)地域での生活を支える為の地域介護サービスの連携を図る

地域での生活支援の為、「グループホーム」、「小規模多機能型居宅介護」、「定期巡回・随時対応サービス」等の地域密着型サービスを拡充し、在宅でのケアが困難になった場合には、介護保険施設等の地域の介護サービス事業者がその担い手となることを推進していく。

『今後の認知症施策の方向性について』の概要

事務局の解説

今回、国が認知症患者に対する総合的な対応施策を打ち出した事については評価出来ます。
現在、国としては医療保険及び介護保険料負担の増大する負担を抑制するために、医療・介護の対応を施設から在宅へシフトする流れに沿ったもので、今後急速に増加する認知症患者の対応について在宅に誘導する目的が今回の厚生労働省の発表の背景にあります。

今回の施策のポイントは

・  早期に診断・対応する事による認知症の進行抑制、医療措置が必要な認知症を早期発見・対応する事による認知症患者の抑制
・  地域での医療・介護を含めた見守り体制の確立

にあります。

特に早期発見が重要なポイントになりますが、国はこの早期発見の主体を担うのは「かかりつけ医」と「家族」であるとしています。認知症は本人が認知症であると自覚できるものではない為、周囲の人が早期発見の役割を担う事となります。
しかしながら、「平成22年国民生活基礎調査」によりますと

・65歳以上の高齢者が世帯主の世帯は約1,700万世帯
・この内、単独世帯は約500万世帯(29.4%)
・夫婦2人だけの世帯は約600万世帯(35.3%)

となっており、この単独世帯は今後、益々増加すると想定されており、更に夫婦2人世帯の中で80歳以上の高齢者が世帯主の世帯が110万世帯もある状況にあります。
この様な単独及び高齢者夫婦世帯の場合、家族が認知症を早期発見し、対応の要請を行う事は決して容易ではありません。
従って、地域全体で見守るシステムの構築が必要となります。
今後、急速に進行する高齢化社会を迎えるにあたり、認知症のみならず、「高齢者の生活全般を日常的に見守るシステム」を自治体、地元自治会、NPO、地元医療・介護事業者等を含めて構築する事が、今早急に求められているのではないでしょうか。
今後の「まちつくり」や「高齢者の住まい」を考える場合、地域全体、建物全体での「見守りシステム」を整備していく事が重要であると考えます。