岩佐喜代志さん(74歳)

 

「命は長らえるためではなく、生かすためにある」

岩佐喜代志さん(74歳)宮城県亘理郡山元町 イチゴ/野菜農家

岩手で生まれ育った私にとって、東日本大震災は他人事ではありません。いてもたってもいられずカメラを片手に被災地にはいりました。

とりあえず思い出の写真を無くされた方々を避難所で撮影して、写真を差し上げることからはじめました。
震災から半年以上すぎて、宮城県仙台市の南にある山元町を歩いていたときです。ほぼ壊滅状態の空き地で黙々と農作業をしているおじいさんがいるではありませんか。しかもそこにはビニールハウスがしっかりとたっているのです。話を聞いてみることにしました。

やはり今回の震災で、ご自宅や畑は津波を被ってしまったそうです。自治体や学者は被災した農家に「除塩しないと塩害で作物は育たない」と指導していたのですが岩佐さんのすごいところは、そんなことを気にせず、すぐ畑仕事を始めたことです。芋、葉もの、大根と、どんどん植えていき、岩佐さんの作物は見事に育っていきました。
これには警告した役人や学者もびっくりしてしまい、それを見ていたまわりの農家も、これを見て奮い立ち、みんな畑仕事をはじめたそうです。

岩佐さんの優しく人なつっこい笑顔をまた見たくて、年末にもお伺いしました。ビニールハウスでは、イチゴが見事に実を付けていました。

私は岩佐さんの「心配していても何も始まらない。とりあえず、やるべきことをやる」という強さに惹かれてしまい、何枚も何枚もシャッターを押していました。