佐々木守弥さん (64歳)

「つくるっきゃない」

佐々木守弥さん (64歳) 陸前高田市気仙町   ササキ建設

佐々木さんは気仙町今泉地区に住む「気仙大工」の棟梁です。
「気仙大工」は障子や板戸、欄間は言うに及ばず、時には茶箪笥や長火鉢なども手がけるのが特徴です。東京、大阪まで出稼ぎに行き、各地に建造物を残しました。
関東大震災の復興、大阪城天守閣の復元に多くの「気仙大工」が携わり、歌舞伎座が関東大震災で消失し再建された時も今泉地区出身の「気仙大工」が棟梁や脇棟梁として力を発揮したそうです。
「気仙大工」の代表作として大船渡市の長安寺が有名で東北随一といわれる壮麗な山門は東日本大震災でも倒壊せず、その技術の高さを証明しました。
佐々木さんの住んでいた今泉地区には藩政期からほとんど変化のない町割りと、「気仙大工」が築いた明治期以来の古い商家が並ぶ貴重な町並みが残っていましたが、今回の震災の津波で残念ながらすべて流されてしまいました。
佐々木さんと知り合ったのは仮設住宅で白い犬と元気に遊んでいるお孫さんたちと友達になったからでした。2年前のあの日、避難先で軽トラックに閉じ込められたまま津波にのまれたが、車体が近くの高台に引っかかり一命を取り留めたそうです。何度も訪ねるうちにすっかり打ち解け、胸のうちを語ってくれました。
先日、佐々木さんが手がけた、ある船長のご自宅が完成しました。行政からの許可を待っていては埒が明かないので、船長の畑を潰して勝手につくってしまったそうです。待てないのには理由がありました。佐々木さんには今泉地区の町並みを再生するという夢があるからです。
佐々木さんはこの家が「再生のきっかけ」になればと願い、飛び切りの本物をこしらえました。
手間がかかるので現代の民家ではあまり見かけない「貫(ぬき)」という伝統的な技法がこの家にはふんだんに使われています。水平材を柱を貫通させ楔で固定しているので地震に強いとされているからです。
また木目が通り引き割りやすい地元産の「気仙杉」を「手斧(ちょうな)」を使って荒削りし、色、つや、香りの良さを引き立てています。この「手斧(ちょうな)」も神社仏閣で使われる事があっても民家では、まず使われることはありません。
佐々木さんは、この作り方や材料の選び方、デザインが後に続く家づくり、町づくりのお手本になるようこの家を完成させました。夢がかなうまで道は遠く険しいでしょう。佐々木さんは「つくるっきゃない」と力強くつぶやきました。

長安寺概要
創建は約900年前と伝えられる真宗大谷派の寺院。東北随一といわれる山門は、1789(寛政10)年の建立で、当時ご禁制だったケヤキ材を使い、伊達藩から建築を禁じられ未完となっている。江戸時代には高野長英が密かに蘭学を教えていたといわれ、その時使用されていた部屋が保存されている。境内には推定樹齢420年のイチョウの木もある。